号外:『その後の天使達』その1
ある晴れた日・・・・。 二階で布団を干していたら、下の道路を茶色と白の物体が2つ駆け抜けて行くのが見えた。 「まぁ!キャバリアみたい・・・」と思った瞬間、血の気が引いた。 それからどうやって2階から下に降りたのかは覚えていない。 やっぱりこの子達は、庭から逃げ出さないように作ってあった柵の下に、見事な穴を掘って、逃走したのだ! 脱走犯はひなとてんてん。この2匹は小柄で身が軽い。 逃げ出せなかった大柄コンビはなと、ミルが悔しそうに柵の中で動物園の檻の中のライオンのようにウロウロしている。 ヘタに追いかければ、余計に遠くへ逃げていくかもしれない。 どうすればいいんだろう・・・・? 車の往来は比較的少ない道だが、それでもたまには大きいトラックも通ったりする。 「神様!!どうか、車が来ませんように!」 困ったときだけお願いしても、神様は聞いてくれるだろうか?
脱走犯たちは、犬がいるよそのお宅を恐る恐る覗いている。 「ウーッ・・・ワンワンワンワン!!!!!」 そこの犬に吠えられて、ビックリした脱走兵たちは一目散に帰ってきた。 まぁ、その逃げ足の早いこと!無事、我が家へと帰ってきた。 結局1台も車もバイクも通らなかったのは、運が良かったとしか言いようがない。 自分たちが悪いことをしておいて、ひなはヒュンヒュンと、か細い声で鳴きながら私にしがみついてきた。 「もうっ!こんな悪いことをしてっ!」と、叱りとばしたいところだが、とにかく無事に帰ってきたので、「イケナイよ!!」と、言いながらピチッ!と、お尻と叩いて終わりにした。 その後は、取り残されて外のスリルを味わえなかった2匹が充分お説教をしてくれる。 掟破りは罪が重い。 耳や首、お腹の皮まで噛みついて鳴くまで許してもらえない。 女の子ばかりなのに、相変わらずその様子は「壮絶」の一言だ。 耳をくわえて、ズリズリ・・・と、数十センチ引きづって行くこともある。 優雅な「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」にはなれそうもない。
私が猫なで声で呼ぼうと、「可愛いねー」と、褒めちぎろうと、「そんなこと言ったってホントは子どもの方が可愛いんでしょ?」とでも言いたげだ。 しっぽも2〜3回振って終わりだ。 どこへ行くにも私から離れなかったモモが、主人のそばにいることが増えた。 これは、私にとって本当にたまらなく寂しい。 ほおっておいたら、モモと私の距離はどんどん離れていくような気がした。 「またモモと二人だけで散歩に行こう!!」 しばらく中断していた、夜遅くなってからの散歩を再び始めることにした。 用事を済ませてウンチ用のビニール袋と、リードを持ったらモモの目に子犬の頃の輝きが戻る。 嬉しい瞬間だ。 いつかもう一度、無邪気に遊ぶモモに会いたい。 「遊んで!」と、はしゃぎながらタオルを持ってくるモモに。
さてさて、子キャバ達は「天使」などとは、お世辞にも呼べないシロモノに成長した。 このまま「天使」などと呼び続けたらホンモノの「天使」からバチをあてられてしまいそうだ。 多少は覚悟していたが、破壊活動はとどまることを知らない。 一番ショックだったのは、私が持っている唯一の「リーガル」の靴だった。 最近、自分の足にピッタリフィットして、本当に心地よくてお気に入りだったのに・・・。 人間、あまりのショックを受けたときには、固まってしまうものだ。 怒る気力もなかった。 仁王立ちしている私を発見した子キャバ達は、自分の手柄を見せようと靴の「一部」をくわえて私の目前で4匹がクネクネとダンスを踊っている。 「あんたらねぇ・・・・」 それだけ言うのがやっとだった・・・。 そして「出しっぱなしにした私が悪い・・・私が悪い・・」と、呪文のように自分に言い聞かせるのだった。 |