第2話:「むこ殿を探せ!パート1」

 娘の「モモに頼もう」の一言は、私にとっても悪魔のささやきだった。
 私だって、モモに似た可愛い子が見たい。
 でも、素人が純血種の交配をするのはどう考えても危険だ。

 「まぁ、じっくり考えてみてからね。」

 あやふやな返事をして、娘の気をそらすために、娘が熱狂中のジャニーズJrに話 題を変える。
 「ねぇねぇ、タッキーは滝沢君でしょー?ヤマピーって、誰?」
別に知りたくはないが、聞いてみた。 「敵」は、あっさりとそれに乗ってきた。 ・・・しめしめ・・・。

 この事は、それで終わると思っていた。 が、どうやら娘は帝釈でのキャバ天国が忘れられなかったらしい。
 りーあさんに送っていただいた、その時の写真を見ては、ため息をついたり叫ん だりしている。

モモちゃん
生後4ヶ月の頃
 それはまるで、恋わずらいのようだ。
 まぁ、本当の恋わずらいなら、叫んだりはしないだろうが・・・。多分。

 私は、ある折り込みチラシを大切にとっていた。 ここから車で10分ほどのペットショップのオープンを知らせるチラシだ。 そこには「交配や子犬のことなどペットのことなら、何でも安心して相談できる お店ができたよ!」と、丸文字で印刷してあった。
 どうも、この「丸文字」というのは、気を許してしまう書体だ。 その上、「何でも安心して」と、書いてある。

  「まっ、聞くだけ聞いてみるか・・・」電話をしてみた。

「交配の相談なのですが、今、キャバリアのトライカラーのメスを飼っているん ですがお世話をしていただけますか?」
 初めに電話に出たおばさんは、どうやら頭の中が「?マーク」で、一杯らしい。 しばらく、黙っていた。
 
「ちょっと待ってよ」そう言って、おじさんに電話を代わった。 代わる途中、「なんとかカラーがどうのこうの言われてもわたしゃ、わからんわ」 と、小声で言っているのが聞こえる。

  『えぇっ!何でも相談できるんちゃうんかいっ!』心の中で、そう叫んだ。 が、根は小心者の私は実際には口に出せない。 おじさんにもう一度、同じ事をたずね、お婿さんはブレンがいいかトライがいい かとりあえず聞いてみた。 「同じキャバリアなら、どれでもかまわんでしょう。ウチにちょうど白と茶色の オスのキャバリアがおりますで。人が飼えなくなったのを引き取ったばっかりの が。」おじさんは、ためらうことなくそう言った。

 ・・・・・舞の海にいきなり“ネコだまし”をくらった小錦の気分だ。

 その後も、おじさんは何やらしゃべり続けていたが、私は挨拶もそこそこに、電話を切り丸文字のチラシも捨てた。

 ペットショップを開くのに最低限の知識や資格は必要ないのだろうか? 人生いろいろ、ペットショップもいろいろ・・・の実例だ。
 ペットショップは信用できる所を選びたい。

  あっ、肝心なモモのむこ殿のお話・・・。

  「これは、モモに産まさない方がいいという、神様のお告げよ」などと娘を説得 しようとしたが、そんな理屈が通るわけもなく目が合う度に「ねぇねぇ、モモに 産ませて!」と、お願いを通り越して命令がくだる。

 実はこの頃には、私の決心も固まっていた。 最善を尽くしてそれでも何かトラブルが生じてもそれはその子と、私達家族の運 命だと受け止め、一緒に生きていく決心が。 その為には、元気できちんとした交配相手を探すことが先決だ。

 そして、なんとかキチンと対応してくれるペットショップを見つけた。 ここから往復3時間はかかるが、そんなことは言っていられない。

 そんなとき、母が「ちょっとぉー、モモはどうも発情期が近いよ。普通の甘え方 じゃないよ」と言った。 「うっそぉー、予定までまだ1ヶ月以上あるよ。」と、相手にしなかった。 それから数日後、仰向けで大イビキをかいているモモの陰部が何となくこんもり しているのを発見した。

  「ゲッ!!」

 母の言うことは当たっていた。さすが、「人間より犬が好き」な人だけある。 モモはもう3才だ。初産にはラストチャンスと言ってもいい。  

 私は慌てて交配をお願いするペットショップへ電話を入れた。

                     第二話:おわり

感想はモモ母さんまたはつぼねまで、よろしくっ!


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