第4話:「天使の予感」

 モモがいない間、いつもはササッと済ませる買い物や、滅多に出来ない外食をゆ っくり楽しむつもりだったのに、なんだか気が抜けてなにひとつ出来なかった。 こうしている今、モモがどんな気持ちでいるのかを思うと、そんなのんきなこと 出来ない・・・という罪悪感のようなものが常にあった。

 そんなこんなで、交配に出して5日目の夕方「明日迎えに来て下さい」と、電話 があった。

「ひゃっほう!!モモに会えるっ!」

 でも、あまりに寂しい想いをしたために気が変になっていないか、心配だったの もウソではない。
 翌朝、「一刻も早くモモに会いたい」と言う、私の母を連れてモモを迎えに行っ た。
  気が緩んだのか、途中で道を間違えてしまったが、無事着いた。

「モモっ!迎えに来たよ!!」
 一瞬、「ン?」みたいな顔をしたが、私達だとわかったモモは「えぇい!離せ! 離さんかいっ!」と、お店の人の手を振り払うようにして、こちらへ走り寄って きた。
  「かわゆい奴め!」と、両手を広げて待っている私の横をすり抜けて、モモは枯 れた声で吠えながら母の胸の中へと、突進した。

「そりゃないぜ、セニョリータ・・・」

 私は、お店の人の手前、広げた手をどうしようかと困った。 その上、余分に持たせたエサは全部平らげていて、モモ自身もなんとなくふっく ら太ったようだった。

 「フン!こんな事なら、外食も買い物も我慢するんじゃなかった!」 顔で笑って心で泣いている私にお店の方が「ハイ。お母さんにはちょっぴり悲し い写真です。」と、交配中の「証拠写真」をくれた。

嬉し恥ずかし交配中の二匹
何故かとっても嬉しそうなモモ(笑)
  ・・・確かに、なんだか悲しい・・・。
 でも、その写真の中の2人(2匹?)は、まるで「ピース」と、Vサインを出し そうな顔をして笑っているように見えたからおかしかった・・・。

  「もし、今回妊娠しなかったら、2回目を無料で交配しますね」 と、言われたが、これだけ声を枯らして母にしがみついているモモを見ると、 「出来てなかったら、それでいいや・・・」と、2回目は考えなかった。

愛おしさも手伝って、しばらくモモは「女王様」のように扱われた。

 そして1ヶ月くらい経ったある日、私は「女王様」を肩に乗せ車を走らせていた。 モモは、車の中ではヘッドレストと、運転者の肩の間によじ登り外を眺めるのが スキなのだ。
 もちろん、そんな状態での運転は大変。 お巡りさんに見られたら、絶対叱られるだろうな・・・。

  目的地まであと20分位の所で「んっ・・んっ・・」と、急にモモが吐き気をもよ おした。
 「うっそー!!」車を止める場所がない!!!!
 その上、着ている服はよそ行きだ! 私は、慌てて私の手の平で、モモの「ゲロゲーロ」を受けてしまった。 それから、車を止められる場所まで5分余り、宮尾すすむのように手の平を上に 向けたまま片手運転を余儀なくされた。 対向車のみなさんはどう思っただろう・・・。
 まぁ、過ぎたことだ・・・。

 その時は、あまりに上手な運転のため、車酔いしたのかと思った。 でも、考えてみたらここ数日モモはなんとなく様子が変だった。 とにかく、よく寝たしエサをねだらない事もあった。
  「つ、つわり?」
 そういえば、本には「1ヶ月くらいでつわりのような症状が現れる」と書いてあ った。

 帰ってから、いつもの獣医さんに電話をして、「つわりらしいモノがあったので すが」と、伝えると、「あまり早くはレントゲンは撮れませんから交配から55日 目くらいになったら来て下さい」と言われた。
 「えぇーーーっ!もっと早く知りたいのに!」と、思ったが「はい。」と、素直 に電話を切った。

  「指折り数える」とは、まさにこの事だ。
 安産のために適度な運動と、太らせない食事を続けながら「55日目」を待った。 お乳も膨らんできたし、赤ちゃんがお腹の中でもぞもぞ動いているのもわかった からまず間違いない。
  しかし、その「もぞもぞ」が、あっちこっちで感じるのだ。
  「キャバリアって、多くて4匹くらいよねぇ・・・」

 お腹がぱんぱんに大きくなった。
 モモも、辛そうだ。文句ばかり言っている。 「ごめんねぇ・・・モモが望んで妊娠したわけじゃないのにね。なんでこんなに しんどいかワケがわからんよねぇ・・・」広島弁でそういいながら、たくさんた くさん撫でてやった。

お腹パンパンで辛そうなモモ

 待ちに待った55日目、獣医さんに向かった。 「わぁー、おっきいお腹ですねー」獣医さんは、そう言いながらモモを抱っこし てレントゲン室に連れていった。
 それから間もなく写真が出来上がる。
  「大きいはずですよ。7匹います。」
  「7匹ですかぁー?」
  「はい、ここと、ここと・・・・」
 と、レントゲン写真を指しながら説明してく ださった。

 確かに、「もののけ姫」に出てくる「こだま」のような白いモノが7匹分ぼーっ と写っていた。頭蓋骨も背骨もちゃーんとある。

 「かっ、可愛い・・・」

 『先生、このレントゲン写真もらえませんか?』と、ノドまで出かかった言葉を ゴックンと飲み込んだ。 お願いしたら、もらえたのだろうか?ちょっと気になる。

 帰り道、私はニヤニヤしながら子犬用のミルクとほ乳瓶を買って帰った。

                    第4話:おわり         

感想はモモ母さんまたはつぼねまで、よろしくっ!


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